略式手続とは
略式手続とは検察官による簡易裁判所への略式命令の請求により公判手続法廷で審理を行う手続を経ることなく検察官が提出した証拠のみにより万円以下の罰金または科料を科す裁判(略式命令)を言い渡す手続のことです(刑事訴訟法条)。
検察官は略式手続によることについて被疑者に異議がないことを書面で明らかにしなければなりません(刑事訴訟法条の)。
略式命令は検察官が略式命令を請求し公判が開かれることなく罰金または科料の略式命令がなされその場で略式命令謄本が被告人に交付されます。被告人が身体拘束されている場合には略式命令謄本の交付と同時に釈放されます(刑事訴訟法条)。
なお道路交通法違反に対しては特別に「待命式略式命令手続」という方式が採用されています。この方式は違反者が交通違反の反則金を支払わなかったり出頭要求に応じなかったりする場合に違反者を逮捕したうえでその逮捕中に略式命令を請求するというものです。
略式手続の概要
略式手続と対象となる事件
略式手続を行うためには以下の要件を満たしている必要があります。
簡易裁判所の管轄に属する事件であること。
万円以下の罰金又は科料を科しうる事件であること。
略式手続によることについて被疑者に異議がないこと。
基本的に略式手続がとられるのは事案が軽微で被疑者が犯罪事実を認めており自分が犯人であることを争っていない場合に限られます。
対象となる具体的な犯罪は傷害刑法条年以下の懲役又は万円以下の罰金暴行刑法条年以下の懲役若しくは万円以下の罰金又は拘留若しくは科料過失傷害刑法条万円以下の罰金又は科料過失致死刑法条万円以下の罰金自動車運転過失致死傷刑法条項年以下の懲役若しくは禁錮又は万円以下の罰金名誉毀損刑法条項年以下の懲役若しくは禁錮又は万円以下の罰金窃盗刑法条年以下の懲役又は万円以下の罰金痴漢行為東京都の「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」条項号条項号月以下の懲役又は万円以下の罰金などがあります。
略式手続の流れ
通常の起訴の場合保釈が認められない限り公判が開かれるまでにか月程度身柄拘束をされた後公判が開かれて証拠調べなどの審理が行われその後に判決が下されることになります。
他方略式手続が選択された場合検察官が略式命令を簡易裁判所に請求し公判が開かれることなく罰金または科料の略式命令がなされその場で略式命令謄本が被告人に交付されます。
被告人が身柄拘束をされている場合は略式命令謄本の交付と同時に釈放されます刑事訴訟法条。
なお略式命令で科すことのできる刑罰は万円以下の罰金又は科料に限られます。
このように略式手続は早期に身柄拘束から解放され事件が迅速に終了するというメリットがある一方公判が開かれることなく検察官が略式命令の請求と共に提出した証拠のみにより事実認定がされてしまうというデメリットがあります。
もっとも略式命令に不服がある当事者(検察官及び被告人)は一定期間内に正式裁判の申立てをすることができその場合には略式命令は効力を失います。
簡易公判手続即決裁判手続について
略式手続と似た簡易な手続として簡易公判手続と即決裁判手続があります。
簡易公判手続とは死刑無期懲役短期年以上の懲役もしくは禁錮に当たる罪以外の罪について被告人が検察官の作成した起訴状に記載された犯罪事実について有罪である旨を述べたときに裁判所の決定により簡略化された証拠調べ手続により審理を行う手続です。
即決裁判手続とは事案が軽微で罰金又は執行猶予付きの判決が見込まれる争いのない簡明な事件について被疑者が同意することを条件に検察官が起訴時に即決裁判手続を申し立て簡易・迅速な審理手続を経て原則として起訴後日以内に開かれる公判期日の当日に執行猶予付きの判決を言い渡す手続です。また冒頭手続において被告人が有罪であることを自ら述べることが条件とされています。
最後に
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