セクハラといっても、どのような行為がセクハラに含まれるの?

どのような行為がセクハラに当たるのか、その線引きに悩む方は多いのではないかと思います。
ここでは、少し具体的なお話をしていきましょう。

A、全国の都道府県労働局雇用均等室が、セクハラに関する使用者・労働者双方からの相談を扱っています。平成26年(2014年)まで3年間のセクハラ関係の相談件数は、9981件、9230件、11289件と、概ね1万件前後でした。同室の受ける全相談件数のうち、半数近くをセクハラ関係が占めている状況が数年続いていることになります 。
セクハラは、「性的」な「(相手が)嫌がる行為」と定義すればわかりやすいと思います。
「セクハラ」の言葉が生まれたのは1980年。30年以上も前なのです。セクハラをめぐる裁判の最初の判決も1990年。それだけ、根深い問題とも言えます。

セクハラを考えるうえでの3つのポイント

1、21世紀に入ってからの造語であるパワハラ(パワーハラスメント)、モラハラ(モラルハラスメント)、アカハラ(アカデミックハラスメント)などと違い、セクハラは、どのような行為が該当するのか、その定義がかなり確立されています。

2、特に職場におけるセクハラは、職場で働く人の意に反する「性的な言動」によって起きるもので、判断基準は「平均的な女性労働者の感じ方」「平均的な男性労働者の感じ方」です。

3、仕事をするうえで「性的な言動」は必要でしょうか? 働く人の気持ちに反する「性的な言動」がなくても、仕事ができるのは明らかです。ですから、人が嫌がる言動は避ける、というのが基本です。

セクハラをめぐる法規制は、男女雇用機会均等法とそれに基づく厚生労働省告示(いわゆるセクハラ指針)に基づいています。
同指針では、事業主が職場におけるセクハラを防止するために講じなければならない措置として、

① 事業主の方針の明確化及びその周知・啓発
② 相談体制の整備
③ 事後(問題が起きてから)の迅速かつ適切な対応
④ 相談者・行為者等のプライバシーを保護、相談者の不利益取り扱いの禁止の周知・啓発
が義務づけられました。

この対象となる労働者には、女性だけでなく男性も、また、パート社員も・契約社員・派遣社員等の事業主が雇用する労働者のすべてが含まれます。また、この場合の「職場」は、通常の出勤先だけでなく、取引先や打ち合わせのためのお店、顧客の自宅、出張先、業務で使う車の車内も含みます。
ですから上司、同僚に限らず、取引先や顧客もセクハラの加害者となる可能性があります。勤務時間外の宴会であっても、業務の延長と考えられる場合には「職場」に含まれます。
加害者は、事業主から懲戒処分を受ける可能性があるだけでなく、裁判により損害賠償が命じられたり、場合によっては刑罰を受けることもあります。また、セクハラが会社の業務遂行の過程で行われた場合には、事業主(企業)が、責任を追及される場合があります。

どのようなことに注意したらよいの?

過去の判決などで「違法」と認定された「性的な言動」の例を示しながらお話ししましょう。

身体的接触は、違法性が認定されるケースが多い

当たり前ですが、「強制わいせつ罪」にあたるような身体的接触はダメです。強制わいせつはセクハラの次元を通り越して、もはや犯罪です。抱きつき、キス、スカートをたくし上げるなどの行為は当然に違法とされます 。
身体的接触でなくても、浴衣や水着など性的魅力をアピールするような服装やふるまいを求めることや、風俗店に行こう、などと強要することもダメです。
  

性的発言は、その発言が「業務に関係ある発言なのかどうか」で判断する

■当時18歳の新入社員に対して、「処女か」と質問したり、「僕はAちゃんが欲しい」と肉体関係を迫る発言をして、これにより新入社員が体調を崩し、退職を余儀なくされた例では、加害者は中小企業の代表者で職場環境の維持改善を図るべきであるのに、職場環境を積極的に悪化させたとして違法だとされました 。
■職場の慰労会で、「エイズ検査を受けた方が良いよ」「処女じゃないんでしょう」などと店長が発言した例では、被害者との関係は、上司と部下という関係にあって、日頃から打ち解けて話すこともなかったと認定された上で、店長としての部下に対する指導目的から発言したものであったとしても、被害者の性的な行動を非難し、その名誉も毀損するものとして違法だとされました 。
   

これらの裁判例からすると、業務の遂行に無関係な性的な事実関係、恋人の有無などをたずねることは避けましょう。業務上の指導や注意、叱責と関連性がある場合には違法とされないこともありますが、裁判所の傾向は限定的です。
よくあるケースですが、加害者本人が親しさを表現するつもりで発言したとしても、それによって相手が性的な不快感を覚えた場合、セクハラとして受けとめられるおそれがあります。
このあたりの線引きは非常に難しいところですが、要は、相手との人間関係を踏まえた発言を心掛ける必要があります。
容姿や恋人関係、性生活に関してたずねたりすることや、性的な冗談は、友人関係においては起こりうることです。しかしながら、それが職場の同僚や、上司・部下に向けられるときは、相手を性的な不快感に陥れないものか、業務の遂行にとって必要なことかを、発言する前に考えないといけません。

性的な噂を流すことも、同様です。
上司が、部下の女子社員に対して、異性関係が派手であるなどと、性向を非難する発言をしたり、異性の個人名を具体的に上げて、その性的関係を内外に噂し、退職を余儀なくさせたといってケースで、違法とされた例があります。

もっとも、会社組織として多くの人員を抱えている場合、事業主が労働者の行動すべてをコントロールするのは不可能です。そのため、事業主は、セクハラ防止のための研修会の開催や社内アンケート調査の実施など啓発活動をしたり、相談窓口を整備することなどが重要となります。

厚生労働省による調査(2012年)によると、対象企業のうち73.4%が、相談窓口を設置しています。従業員1000人以上の企業では96.6%とほとんどの企業で窓口が設置されているの対して99人以下の企業では37.1%と、まだまだバラツキがあります。また、会社とは独立した外部の組織(社外)に委託しているのは28.9%であり、そのほとんどは、社内相談窓口も併設しているようです。
セクハラに限らず、ハラスメントの問題を社内ですべて適切に処理できるかどうかは、上司と部下といった人間関係をはじめ、企業イメージなど複雑な要素をはらんでおり、中立性の点から難しいところです。

被害に遭った、と感じた場合には、こういった相談窓口を頼ることも適切な対応のひとつではありますが、そもそも窓口がない場合や、社風からして適切な対応を期待できないと感じている場合などは、セクハラ(労働問題)などに強い弁護士へ早期に相談することをおすすめします。
また、事業主の側においても、常設の相談窓口を作ることができない場合や、社内での対応環境の構築が難しい場合には、こうした問題に詳しい弁護士に、体制整備を相談することも考えてみましょう。
こういった問題は、中立な立場の第三者が入る方が、よりスムーズに解決できるものと言えます。

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