不倫した配偶者からの離婚請求は認められるの?

1 はじめに

「パートナーの不倫が発覚し、離婚してほしいと言われた」、「自分で不倫をしておきながら、離婚してほしいなんて虫が良すぎるのではないか?」などとお悩みの方もいらっしゃるでしょう。たしかに、自分で不倫をしておきながら離婚したいなどと言われたパートナーの方としては、とても納得できることではないでしょう。
  では、日本の離婚裁判において、不倫などの離婚原因を自ら作り出した配偶者(以下、「有責配偶者」といいます。)からの離婚請求は認められるものなのでしょうか。今回は、このような疑問についてお話しします。

2 裁判所の考え方

当初、裁判所は、有責配偶者からの離婚請求は認められないとの判断をしていました(最高裁判所昭和27年2月19日判決など)。

しかし、その後、有責配偶者の有責性が他方配偶者の有責性と比べて大きいとはいえないときや、夫婦関係の破綻が有責配偶者によって生じたものとはいえないときなど、一定の場合には有責配偶者からの離婚請求を認めるとする判決が出され始めます。このような判決が出され始めたのは、有責配偶者からの離婚請求は認められないとする裁判所の硬直的な考え方を批判する声が高まっていたことなどに原因があると考えられます。

そして、最高裁判所昭和62年9月2日判決は、有責配偶者からなされた離婚請求について、①夫婦がその年齢及び同居期間と対比して相当の長期間別居し、②夫婦の間に未成熟子(親の支援がなければ生活できない子)がいない場合は、③相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれるなど離婚請求を認めることが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情のない限り、有責配偶者からなされた離婚請求も認められるべきであると判断し、有責配偶者からの離婚請求が認められるための要件を示しました。

有責配偶者からの離婚請求については、現在も昭和62年に出された上記最高裁判所の判決で示された①~③の要件に沿って判断されています。では、それぞれの要件について見ていくことにしましょう。

3 ①長期間の別居

まず、別居期間については、10年を超える別居期間がある場合は、夫婦の年齢や同居期間との対比などを検討することなく、長期間の別居であると判断される傾向にあるようです。

一方、別居期間が10年未満である場合は、夫婦の年齢や同居期間との対比により、長期間の別居と判断されない可能性があります。

たとえば、夫60歳、妻57歳、同居期間26年、別居期間8年の事案で、夫婦の年齢や同居期間を考慮すると別居期間が相当の長期間に及んでいるとはいえないとして、離婚請求を認めなかった判決があります。
もちろん、別居期間が10年未満であっても、同居期間が極めて短いような場合は、相当の長期間の別居であると判断されることもあると考えられます。

4 ②未成熟子がいないこと

次に、未成熟子がいないことについては、未成熟子がいる場合は絶対に離婚請求が認められないということではなく、離婚によって子の家庭的・経済的状況などが極めて悪化し、その結果、子の福祉が害されるようなことになる特段の事情があるときには、離婚は認められないと解釈されています。

なお、どの程度の年齢の子を未成熟子というべきかの判断ですが、過去の裁判例などからしますと、子が高校生以上である場合には、人格的にある程度成長していることや今後の監護を要する期間が比較的短期であることなどから、離婚請求が認められることがあるといえます。

5 ③離婚請求を認めることが著しく社会正義に反するような特段の事情がないこと

この要件は、相当の長期間別居しており、かつ未成熟子がいない場合でも、相手方配偶者が離婚によって精神的・社会的・経済的に極めて苛酷な状態におかれるなど離婚請求を認めることが著しく社会正義に反するといえるような特段の事情がある場合は離婚請求を認めないとすることにより、有責配偶者から離婚請求された相手方配偶者に配慮したものです。

ただ、精神的・社会的に苛酷な状態というのは別居期間が長期間になれば考えがたいと思われますし、離婚に伴う経済的な不利益については財産分与や慰謝料により解決すべきものであると思われますので、この要件により離婚が制限される余地は小さいのではないかといわれています。

なお、この要件を適用して有責配偶者からの離婚請求を認めるべきでないとした裁判例としては、東京高等裁判所平成20年5月14日判決(別居期間15年以上、未成熟子がいない事案。妻の疾病や長男の身体的障害などを考慮し、有責配偶者である夫からの離婚請求を認めることは著しく社会正義に反し許されないとした。)があります。

6 おわりに

これまでお話ししてきたとおり、有責配偶者からの離婚請求が認められるかどうかは、上記①~③の要件を中心に判断されることになります。

ただ、実際の裁判では、上記①~③の要件のみならず、有責配偶者の責任の程度、相手方配偶者の婚姻継続の意思、別居後に形成された双方の生活関係などの個別具体的な事情をも考慮して、有責配偶者からの離婚請求を認めることが社会正義に反しないか判断されているのが実情です。

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