執行猶予とはどのような制度か

はじめに
新聞やテレビを見ていると、しばしば刑事事件の判決言渡しの場面で「懲役〇年執行猶予△年」という判決を目にすることがあります。

懲役というのは何となくイメージが湧くと思いますが、執行猶予についてのイメージとなるとよく分からないという方が大半だと思います。

そもそも、刑の執行を猶予するという文字通りの意味以上にどんな意味合いがあるのかというのは、一般には知られていない点も多いので、本稿で少し掘り下げてみます。

執行猶予の趣旨

刑の執行猶予とは、有罪判決にもとづく刑の執行を一定期間猶予し、その期間内に再度罪を犯さないことを条件として、刑罰権を消滅させる制度です。

具体的に言えば、判決で有罪は宣告されたものの、実際に刑務所に入れられたり、罰金を納付させられたりするのを一定期間保留にしてもらいながら普通の生活を送り、その期間中、罪を犯さずに過ごせば、宣告された刑罰は効力を失うことになる一方刑法条、その期間中に再び罪を犯してしまうと、その罪の刑罰と執行を猶予されていた分の罪の刑罰を合わせて科せられるというものです。

実際に刑事裁判にかけられて犯行自体は認めるという場合、多くの被告人にとっては、この執行猶予付き判決を得て、実刑直ちに刑務所に入れられる等の刑罰を受けることを免れることができるかどうか、という点が最大の関心事になります。

執行猶予の条件

ところで、どんな判決にも執行猶予を付すことができるかというと、そういう訳ではありません。基本的には、宣告される判決の内容が、年以下の懲役または禁錮の刑や万円以下の罰金の場合にのみ、執行猶予を付すことができます刑法条項。

そのため、法律で定められている刑の下限が懲役年を超えるような重い罪、たとえば殺人罪刑条や現住建造物等放火罪刑法条で処罰される場合、刑の減軽をすべき事情がない限り、裁判所は執行猶予を付した判決を出すことができず、被告人は、前科の有無にかかわらず、無罪判決が出ない限り実刑を避けることができません。

保護観察とは

執行猶予という言葉と同じく、保護観察という言葉も小説などでしばしば目にすることがあります。これは常に執行猶予とセットで実施されるものですが、元々は再度の執行猶予刑法条項を付す際に、今度こそ社会生活内で更生させるために、保護観察官と保護司が協働して、罪を犯した人を指導する制度です刑法条の。

現在では、初めて執行猶予付き判決を受けるときでも、特に再犯防止の必要性が大きく、更生を援助しなければならないような場合には、裁判所の裁量で保護観察に付すことができるようになっています裁量的保護観察。刑法条の第項。また、再度の執行猶予を付す場合は、必ず保護観察に付さなければならないとされています必要的保護観察。刑法条の第項

最近の法改正

近時、刑の一部執行猶予という制度が新しく導入されました刑法条の。
言葉がややこしいのですが、これはさきほど説明した「刑の全部の執行猶予」とは異なる制度で、刑罰を科せられることが留保されるものではありません。

つまり、刑の言渡しと共にその刑の一部の執行を猶予されるというのは、まず宣告された刑の一部の執行を受けた上でたとえば、懲役年の有罪判決を受けた被告人が年だけ刑務所で懲役刑を受け、その後残りの刑の執行を一定期間猶予されるということです。

もちろん、猶予期間中に別の罪を犯してしまうと、執行猶予は取り消され、元々の刑の残りと新しく犯した罪に対する刑の両方を執行されることになります。端的に言えば、刑が執行されるので、刑の一部執行猶予とは実刑の一種ということができます。

最後に

以上、執行猶予の制度とその周辺について概略をご紹介しました。弁護士法人琥珀法律事務所では、刑事事件の相談も承っております。ご自身あるいは家族の方が刑事事件の当事者となってしまった場合には、是非、ご相談ください。


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