物損事故と人損事故の違い

はじめに

これを読まれている方の中で、不幸にも交通事故に遭われたことのある方は、「物損」「人損」といった言葉を聞いたことがあるかもしれません。そのようなご経験がない方からすれば、あまり馴染みのない言葉だと思います。
ですが、物損事故と人損事故を区別することは交通事故事件を適切に解決するためには非常に重要です。
まずは、あまり馴染みのない上記二つの言葉の意味から解説しましょう。

物損と人損の意味

「物損」とは物件損害のことで、交通事故の結果、乗っていた自動車や自転車、着ていた服などを壊されたり汚されたりしたことによる損害をいいます。

「人損」とは人身損害のことで、交通事故により人が死亡したり、けがをしたりしたことによる損害のことを意味します。
これは簡単な言葉の意味の紹介ですが、具体的に物損と人損にはどのようなものがあるのかを知っておくと、実際に損害賠償を請求する場合などにおいてとても役に立ちます。
では、物損と人損にはどのようなものがあるのかを紹介していきましょう。

物損

物損の中でもおそらく皆さんがまず思いつくのが、壊れてしまった車や自転車の修理費だと思います。確かにこれも立派な物損ですが、修理費や修理した車両の時価額によっては、少々面倒な問題が発生します。

詳しくは「経済的全損」に関する過去の記事を見て頂けたらと思いますが、簡単に紹介しますと、壊れた車両の時価額よりも修理費の方が高い場合には、「経済的全損」といって、修理費をそのまま請求できるわけではなく、車両の時価と買い替えに要する諸費用を請求することになるという決まりがあるのです。

修理費以外にも、物損には、代車費用(修理期間中、代わりに使用した車両の費用)や、休車損(壊れた車両が事業用車両の場合に、修理期間中、その車両を使えたら得られたであろう利益)などがあります。

人損

次に、人損とは・・・・・・
① 害者の方が亡くなった事故によって発生する損害。
② けがをした事故によって発生する損害。

けがをした事故による損害はさらに・・・・・・
A.そのけが自体による損害
B.けがの治療が完了した後に残ってしまった後遺障害(例えば、腕にしびれが残って物がうまくつかめなくなったなど)
A・Bの損害に分けられます。

具体例

それぞれの具体例を詳しく見ていきましょう!

【事故による損害の例】

葬儀費用(お葬式にかかった費用)、死亡逸失利益(亡くなった方が事故に遭わず生きていたら将来得られただろう収入)、死亡慰謝料(亡くなった被害者の方ご自身の精神的な損害)、遺族固有の慰謝料(遺されたご遺族の精神的な損害)など

【けがによる損害の例】

≪Aの例≫
治療費等(病院での治療費や薬代など)、入院雑費(入院期間中にかかるパジャマ代等の諸雑費)、通院交通費、休業損害(けがのために会社などを休んだことで得られなかった給料など)、入通院(傷害)慰謝料(入院や通院をしたことに対する精神的な損害)など
≪Bの例≫
後遺障害逸失利益(将来得られるはずだったのに後遺障害が残ったことで得られなくなった収入)、後遺障害慰謝料(後遺障害が残ってしまったことに対する精神的な損害)、家屋改修費用(後遺障害(例えば足が不自由になってしまったなど)のために家をリフォームしたような場合の費用)、将来の介護費用(後遺障害により将来の介護が必要になってしまった場合の費用)など

物損と人損を分ける意味

それでは、物損と人損を分ける意味はなんでしょうか。大きく分けてポイントが2つあります。

適用される法律

交通事故の際に登場する法律として、自動車損害賠償保障法(「自賠法」などと言われます。)という法律があります。この法律は、交通事故の被害者の方の立証責任を軽減し、損害賠償を請求しやすくするものですが、人損事故の場合にしか適用がありません。

一方、物損事故の場合は、自賠法の適用はなく、民法709条の不法行為の規定が適用されることになります。

適用される保険

物損については、相手方の対物賠償責任保険などから損害賠償金が支払われることになります。また、被害者か加害者かに関わらず、車両の修理費用などについては、自身の加入している車両保険などから保険金を受け取ることができます(ただ、自身の車両保険を使用すると、保険の等級が下がってしまい、今後の保険料が上がることになります。)

人損については、相手方の自賠責保険や対人賠償責任保険から損害賠償金が支払われることになります。また、被害者か加害者かに関わらず、自身の加入している人身傷害補償保険などから保険金を受け取ることができます。

これらの保険のうち、自賠責保険以外の保険については、自動車の運転者などが任意に加入する保険であり、一般的に任意保険と呼ばれているものです。一方、自賠責保険というのは、自動車を運転する人に加入が義務付けられている強制保険で、交通事故により人損を被った方を保護するために導入された制度です。

なお、上で見たように物損には自賠責保険の適用がありませんので、自賠責保険からは何ら給付を受けられないということになります。

おわりに

この記事では、物損と人損の意味や両者の違いを説明してきました。
自動車はもはや日常生活に必要不可欠な存在です。それゆえに交通事故は誰にいつ起きても不思議ではありません。そして、ひとたび交通事故に遭遇するとパニックになってしまい、一体どんな損害が発生しているのか、どのように対応すればよいのか、冷静に考えることができなくなってしまうこともあるかもしれません。

私たち弁護士は、そんな皆様のお話に真剣に耳を傾け、請求できる損害を的確に把握し、今後の見通しを明確にお伝えすることで、皆様のお役に立つことができます。交通事故でお困りの際は、お気軽に弁護士法人琥珀法律事務所までご連絡下さい。


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